いまわたしは舟から上がって
土手を下りて
まっすぐ通っている白い道を歩いている
うちへ帰るのだ
途中にもう一本川があって
そこに架かってるかって橋が朽ちているので
足元を見い見い恐々渡る
それからまた一本道を歩いていく
もうすぐうちへ着くはずなのに
いくら歩いても
道ははてしなく続いている
わたしはだんだん薄くなっていく
……消える……
……いまわたしは舟から上がって
土手を下りて
まっすぐ通っている白い道を歩いている
うちへ帰るのだ……
幾度も
幾度も……
母はだんだんと朽ちて
中はもう水がいっぱいたまっているのだ
沈みもせず
わたしを立ち上がらせる
わたしはうちへ帰らなければならないのだ
________________________________________
「古い舟」 2011.11