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にくんでにんにく
はじかいてにんじん
やまいもかかえて
やまおりる
にくんでにくんで
にんにんくぎらい
はじかいたまんまで
にんじん煮る
にくみにくみやまいも
すりおろす
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こよりを撚るには
ろうそくの灯がよく似あう
おんなが集って
こよりを撚る
おたがいだれのこともなんにも知らないまま
白い布でか
らだをおおって
むごんで
こよりを撚る
仕事は
夜はじまる
いちばんさきに来たものが
ろうそくに火をつける
こよりは
よあけまで撚る
こよりは
千本ずつ箱につめておくと
帰ったあと
とりにくるらしい
こよりを撚る理由も
こよりのゆくえも
知らないまま
こよりを
撚る
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せんたくやの店さきで
このねぎを洗ってくださいとたのむ
9本ありますというと
そんなこといちいちいわなくても
ちゃんとやりますよ
どこのうちでどのくらい必要かぐらい
調べてしょうばいしてますからねとおこっている
わたしはわたしが必要なだけもってきたのですといい返す
みんながわらっている
わたしだけ浮きあがってるみたいで気まずい
店のまえはあき地になっている
そんなに心配しなくてもだいじょうぶよ
あっちでゆっくりしていたら
おんなのひとがそう言い言いむこうへ行く
あき地には人がいっぱいいて
おもいおもいにかたまって話したりしている
そこにはわたしのともだちも知人もいない
けど、ひとりはなれているのもなんだかみたいで
あるきだす
とちゅうねぎの葉っぱをふんづけて
すべってころんだ
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Kさんが死んだ
四つ辻までくると
KさんのおくさんとむすめのEちゃんがいる
あのひとはね
あのとしになって背がのびつづける病気でね
死んでからまでのびつづけているのよ
だから早く済ましてしまわないと困るんだけど……
おくさんはおろおろしながらはなしている
Kさんのお棺はとほうもなく長い
長すぎて霊柩車へ乗らないので
それより長いリヤカーを持ってきて
男たちが右往左往している
みんなで貸切バスに乗って
川土手を走っていく
花火があがる
いくら行っても土手ははてしない
ときどき花火があがる
きれいだね
こんやの花火はとくべつきれいだわ
Kさんのおくさんがいう
また花火があがる
もうだれもKさんのことなんか忘れたように
花火に見とれる
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かもじを入れて髪ゆいあげて
ゆもじひとつではだしになって
しゃもじかついでデモに行ったきり
かえってこないおかあさん
わたしのわもじへからみつき
わたしのたもじをしょぶんして
わたしのしもじにいちゃもんつけて
しゃもじかついでデモに行ったきり
かえってこないおかあさん
おだまり
日だまりで
火だるまになって
わたしはわもじにわをかけて
わたしはたもじのゆくえを追って
わたしはしもじを書きなおし
しゃもじかついでデモに行ったきりかえってこないおかあさん
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橋のうえで
目があったとたん
おとこは魚になって
自分を地面にたたきつけている
血がにじんできたのに
たたきつけてもたたきつけてもまだ
たたきつけきれないものがあるように
いつまでもやめない
わたしは通りすぎてしまうこともできるのに
川おとが冴える
そのほかはみんなしずかだ
わたしは通りすぎてしまうこともできるのに
おとこはまだやめない
川おとが深まる
わたしは通りすぎてしまうこともできるのに
魚のにおいが濃くなる
わたしは通りすぎてしまうこともできるのに
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家へ帰ると
そこいらじゅうねずみが走りまわっている
かまどの中にむかしからいる猫がいる
北がわのかべに
牛と山羊の首がかかっている
わたしの少女のときの首もかかっている
土間で弟妹たちが食事している
ここだけ古い西洋画のようにしずかだ
食器戸棚をあけるとかいだんがある
かいだんをおりていく
おりてもおりてもかいだんはつづいている
だんだんおなかがすいてくる
かいだんをおりると土間で
弟妹たちが食事している
食器戸棚をあけるとかいだんがある
かいだんをおりていく
ますますおなかがすいてくる
おりてもおりてもかいだんはつづいている
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